売上や問い合わせ件数、作業実績といった業務データを、会議や定例報告のたびに表計算ソフトへ書き出して集計し、グラフにして資料へ貼り付ける。こうした手作業による「見える化」は、多くの職場で日常的に行われています。一方で、集計の手間がかかる、資料によって数字が食い違うといった理由から、継続的な運用が負担になっているケースも見受けられます。
本記事では、業務データの可視化が続きにくくなる背景と、目的に合ったグラフの選び方、継続して使える集計の仕組みを設計する際の考え方を整理したうえで、ノーコード・ローコードデータベース「RapidTable」のグラフ機能による実現方法をご紹介します。
この記事でわかること
- 業務データの可視化が、手作業の集計では続きにくくなる理由
- 目的に合ったグラフを選び、継続して使える集計を設計するための3つの考え方
- RapidTableのグラフ機能でできることと、運用・共有を支える仕組み
業務データの「見える化」が続きにくい理由
データの活用には、収集・管理の負担が伴う
総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、製品やサービスから得られる個人データ以外のデータについて「積極的に活用している」または「ある程度活用している」と回答した日本企業は5割弱で、7割前後の米国やドイツとは開きがあるとされています。同調査では、データの取り扱いや利活用に関する課題や障壁として「データの収集・管理に係るコストの増大」などが上位に挙がり、日本企業では「データを取り扱う(処理・分析等)人材の不足」を挙げる回答者が他の2か国と比べて多い結果となりました。
データを業務の判断に活かすうえでは、高度な分析の手法だけでなく、その手前にある「集めて、整えて、集計する」工程の負担をどう抑えるかも、検討しておきたい論点といえます。
出典:総務省「令和3年版 情報通信白書 デジタルデータの活用状況」(調査は総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」)
集計のたびに繰り返される「書き出し・加工・貼り付け」
業務システムや共有のスプレッドシートにデータが蓄積されていても、グラフにするまでには、データの書き出し、表計算ソフトでの加工・集計、グラフの作成、資料への貼り付けといった作業が必要になることが一般的です。月次や週次の報告であれば、この作業は報告のたびに発生します。
また、集計に使う関数やマクロ、加工の手順が特定の担当者の手元にしかない場合、担当者の異動や不在をきっかけに集計が止まったり、手順の再確認に時間がかかったりする可能性があります。
資料ごとに数字が異なり、「どれが最新か」がわかりにくい
手作業で作成したグラフは、集計した時点のスナップショットです。同じテーマの資料でも、作成した時期や担当者によって集計期間や対象の範囲が異なれば、数字は一致しません。会議の場で「どの数字が正しいのか」の確認に時間を取られ、本来の目的である判断や議論に進みにくくなる、という状況も起こりえます。
「まだ登録されていないもの」は、グラフに表れにくい
グラフは、登録されているデータを集計して表現するものです。たとえば、全拠点から月次報告を集めている場合、提出済みの件数はグラフで確認できても、「どの拠点がまだ提出していないか」はグラフからは読み取りにくくなります。未提出や未入力の確認は、名簿やマスタと突き合わせる別の作業として残りがちです。
続けられる「見える化」をつくる3つの考え方
業務データの可視化を一過性の取り組みで終わらせないためには、利用するツールにかかわらず、次の3点をあらかじめ整理しておくと、運用を始めた後の見直しもしやすくなります。
「何を知りたいか」からグラフの種類を選ぶ
グラフの種類は、見た目の好みではなく、読み手に伝えたいこと(推移なのか、比較なのか、構成比なのか)から選ぶのが基本です。代表的な対応関係は次のとおりです。
| 知りたいこと | 適したグラフ | 業務での例 |
|---|---|---|
| 時間の経過に伴う推移 | 線グラフ | 月別の問い合わせ件数 |
| 項目間の大小の比較 | 棒グラフ | 拠点別の受注件数、担当者別の対応件数 |
| 全体に占める割合 | 円グラフ | 問い合わせ種別の構成比 |
| 2つの数値の関係 | 散布図 | 訪問回数と受注金額の関係 |
| 2つの切り口で見た分布や偏り | ヒートマップ | 曜日×時間帯ごとの受付件数 |
| 階層ごとの内訳の大きさ | ツリーマップ | 事業部>部門>費目ごとの費用 |
| 分類の体系や構成 | ツリー図 | 製品カテゴリの構成 |
なお、円グラフは項目数が多くなると各項目の大きさを比べにくくなるため、項目が多い場合は棒グラフのほうが読み取りやすいとされています。
集計の条件を「定義」として残し、同じ数字を共有する
1つのグラフは、「どのデータを対象に(対象範囲)」「いつからいつまでの(期間)」「どう集計し(集計方法)」「どのくらいの頻度で更新するか(更新頻度)」という条件の組み合わせで成り立っています。これらを担当者の手順書や記憶に委ねるのではなく、グラフの定義として保存し、誰が見ても同じ条件で集計された数字を参照できるようにしておくことで、資料ごとの食い違いや属人化を抑えやすくなります。条件を見直す際も、定義を1か所変更すれば済むため、変更の経緯を追いやすくなります。
「あるデータ」と「ないデータ」の両方を確認する
件数や金額の集計に加えて、名簿やマスタに対して「まだ登録されていないもの」を確認する視点を持っておくと、報告の回収状況や入力漏れの把握に役立ちます。たとえば、店舗の一覧と月次報告、メンバーの一覧と日報を突き合わせるといった使い方です。グラフによる傾向の把握と、未登録の確認を同じ仕組みの中で行えれば、照合作業の手間を減らしやすくなります。
RapidTableの「グラフ機能」でできること
ここからは、上記の考え方をRapidTableでどのように実現できるかをご紹介します。
RapidTableは、エクセルやスプレッドシートを扱う感覚でデータベースを設計できる、SaaS型のノーコード・ローコードデータベースです。グラフ機能は、プロジェクト(データベース)に登録されたデータ(レポート)を、表計算ソフトへの書き出しを介さずに集計・可視化するアプリで、プロジェクトの[アプリ追加]メニューから追加します。入力フォームやスプレッドシートから登録したデータに加え、REST APIやデータ連携機能で外部システムから取り込んだデータも、同じプロジェクトのデータとして集計の対象になります。
7種類のグラフと欠損リストから、目的に合わせて選択
グラフ機能では、次の表示形式を選択できます。グラフ上に表示するフィールドは、プロジェクトのスキーマ(項目定義)からメニューで選ぶだけで指定できます。
| 線グラフ 棒グラフ |
X軸に使うフィールドを選び、X軸の値ごとのデータ件数を表示する「単純集計」と、集計フィールドを追加する「クロス集計」を選択します。クロス集計では、数値などのフィールドは合計・平均値・最小値・最大値などで、それ以外のフィールドは値ごとの個数で集計します。棒グラフは積み上げ(スタック)表示にも対応しています。 |
|---|---|
| 円グラフ | ディメンション(分類の軸)とするフィールドを選ぶと、値ごとの件数と割合を表示します。 |
| 散布図 | X軸・Y軸のフィールドを指定します。データ1件ずつをプロットする「レポート集計」(ラベルや、数値フィールドによるプロットの大きさも指定可能)と、指定したフィールドの値でグループ化してから集計する「グループ集計」を選択できます。 |
| ヒートマップ | X軸・Y軸のフィールドと、区画に表示する値(データ件数、または任意のフィールドの集計値)を指定します。日付型のフィールドは、時間・日・曜日・月の単位で軸を構成できます。カラースキーム(最大16色)、行列の入れ替え、値の非表示も設定できます。 |
| 階層構造図 | 集計対象のフィールドと集計方法、分類フィールド(大・中・小の最大3階層)を指定し、内訳の大きさを面積で表すツリーマップを作成します。 |
| 木構造図 | 分類フィールドを最大6階層まで指定し、分類の体系をツリー図で表します。方向(水平・垂直)と線種(直線・曲線)を選択できます。 |
| 欠損リスト | 選択肢などの値のうち、まだデータが登録されていないものを一覧にします(後述)。 |
画面上のステップに沿って設定し、プレビューで確認
グラフの設定は、画面左側に表示される設定パネルで、「種別」「集計フィールド」「検索条件」「集計期間」「更新間隔」「アピアランス(タイトル)」の順にステップを進めて行います。設定を変更すると、画面右側のグラフにプレビューとして反映されるため、表示を確かめながら条件を調整できます。集計に必要なフィールドが未指定の間は、グラフの種類ごとのサンプルが表示されます。
内容を確定するには[保存]を、保存済みの設定に戻すには[リセット]を実行します。設定パネルを開くボタンは、プロジェクトの管理権限を持つユーザーにのみ表示されます。
スプレッドシートの検索条件と集計期間で、対象を絞り込む
「検索条件」のステップでは、スプレッドシートの[レイアウト]メニューで保存した検索条件を選択し、集計の対象となるデータを絞り込めます。日頃スプレッドシートで使っている条件をそのままグラフにも適用できるため、一覧で見ている数字とグラフの数字をそろえやすくなります。
「集計期間」は、今日・直近7日間・直近30日間・直近90日間・直近1年間・任意の期間から選択します。期間の判定に使う日付は、データの作成日時・更新日時のほか、スキーマで定義した日付型のフィールド(例:受注日、対応日)も指定できます。
更新間隔ごとに集計結果を保持し、集計日時を表示
「更新間隔」は、1時間・3時間・12時間・1日・3日・1週間から選択します。集計結果は保存され、更新間隔の間は保存済みの結果を表示し、間隔を過ぎた後の表示時に改めて集計します。グラフを開くたびに集計し直す必要がないため、閲覧者が多い場合でも表示を軽快に保ちやすくなります。設定を保存した際には、その時点の内容で改めて集計が行われます。
また、グラフのタイトルの下には集計日時が表示されます。閲覧者は、その数字がいつ時点のものかを確認したうえで参照できます。
「まだ登録されていないもの」を一覧にする欠損リスト
欠損リストは、検査対象として指定したフィールドの値のうち、まだデータが登録されていないものを一覧にする表示形式です。検査対象には、セレクト・チェック・ラジオ・タグ・ユーザーの各フィールドを指定できます。選択肢として定義した値(別のプロジェクトのデータを参照する選択肢を含む)、タググループのタグ、プロジェクトのメンバーなどを基準に、検索条件で絞り込んだデータの中で一度も使われていない値を抽出します。
たとえば、店舗を選択肢に持つ月次報告のプロジェクトであれば、報告が登録されていない店舗の一覧を確認できます。[新規作成]ボタンを表示する設定にしておくと、プロジェクトの編集権限を持つユーザーは、一覧の項目からその値をあらかじめ入力した状態で新しいデータの登録画面を開けます。
運用・共有を支える仕組み
権限に応じて、閲覧と設定を分けられる
グラフの閲覧にはプロジェクトの閲覧権限が、グラフの設定の変更にはプロジェクトの管理権限が必要です。管理権限を持たないユーザーには設定パネルを開くボタンが表示されないため、多くのメンバーにグラフを公開しても、意図しない設定変更が起こりにくい構成としています。欠損リストからのデータの新規作成も、プロジェクトの編集権限を持つユーザーに限られます。
ダッシュボードへの集約と、画像としての保存
グラフはプロジェクトのアプリとして、ダッシュボードに配置できます。複数のプロジェクトのグラフや関連するツールを1つの画面にまとめておけば、日々確認したい情報への動線を短くできます。グラフは表示領域の大きさに合わせて描画されるため、RapidTableの画面からPCやタブレットなど利用環境に応じて確認できます。
報告資料などにグラフを掲載したい場合は、グラフ右上のボタンから画像として保存できます。資料に貼り付けたグラフも、元のデータと集計の定義はRapidTable上の1か所で管理されるため、次回以降の報告では同じ条件の最新の集計結果から画像を取得できます。
集計対象の規模に応じた使い方
集計の対象となるデータが非常に多い場合や、分類の種類が多い場合は、処理を保護するために集計が中断され、その旨のメッセージが表示されることがあります。ヒートマップでは、X軸・Y軸それぞれに並べられる項目は最大100件です。対象が大きくなる場合は、検索条件や集計期間で範囲を絞り込む、分類の粒度を見直すといった方法で、読み手にとっても把握しやすい単位に整理することをおすすめします。
まとめ
業務データの可視化を継続するには、グラフを作る技術だけでなく、集計の手間を抑え、同じ条件の数字を誰もが参照できる仕組みが重要です。知りたいことからグラフの種類を選ぶ、集計の条件を定義として残す、登録されているデータと未登録のものの両方を確認する、といった考え方は、ツールの選定にかかわらず検討の出発点になります。
RapidTableのグラフ機能は、これらの考え方を画面上の設定として表現できるように設計しています。データの登録から集計・可視化までを同じ基盤で行えるため、報告のたびの集計作業の削減や、業務部門・情報システム部門による可視化の内製化につながることが期待できます。
また、入力フォームやREST APIで集めたデータを、承認や帳票出力などの機能とあわせて活用できるため、まずは身近な報告業務の可視化から始め、DXの取り組みを段階的に広げていく基盤としてもご活用いただけます。
※ 記載の内容は、本記事公開時点の製品仕様に基づいています。機能の詳細は製品マニュアルをご確認ください。
